労働生産性とは、従業員一人当たりが生み出す付加価値額のことです。
(付加価値額は売り上げから外部からの仕入れを引いたもの。)
美容室だけでの比較はできませんが、サービス業全体の数値でアメリカと比較すると、日本の労働生産性は半分程度だそうです。
日本において、サービス産業は、国全体のGDPの約7割を占めています。
安倍政権では、GDP600兆円への経済成長(現在は約480兆円)を掲げており、GDPの割合が大きなサービス産業の労働生産性向上がとても重要な課題とされています。
そのような流れの中で、「サービス産業生産性協議会」が、優れた生産性向上の取り組みを行っている企業やサービスを表彰する「日本サービス大賞」というものを、6月に発表しました。
第1回の「総理大臣賞」はJR九州の「クルーズトレイン ななつ星in九州」でした。
この列車(サービス)の詳しい内容や授賞理由は、公式サイト等を見てみてください。
この「ななつ星」事業を担当されているJR九州の方の講演を、7/12に聞かせていただく機会がありました。
お客様に感動を与える、とてもすばらしい取り組みが盛りだくさんでしたが、その中でもっとも印象に残ったのは、「旅が始まる前にお客様の期待を超えるサービスを提供することに重点を置いている」という話でした。
この列車は週に1度しか走っていなく、1回で30名が定員だそうです。
完全抽選制で、倍率は約25倍。
旅行日程は3泊4日、費用は60〜80万円。とても高価です。
さて、「ななつ星」の旅は、抽選結果発表から、ストーリーが始まります。
実際の旅行日の半年前から担当者が各お客様に付き、旅への期待を一緒に作り上げていくそうです。
旅の説明や、プランの設計、お客様の旅に対する想いを聞き、何度もコミュニケーションをとりながら、共に旅への準備を進めていくプロセス。
「ななつ星」のサービスの勝負のポイントは、この「出発前の準備」にあると言えます。
そのような過程を経て、旅の当日、一緒にプランを作り上げたスタッフに実際に会ったお客様は感動し、高揚感を持って旅をスタートするのだそうです。
なんでも、担当のスタッフさんに初めて面と向かって会ったときに、涙するお客様も多いのだとか。列車に乗る前に。
繰り返しになりますが、このサービスの成功のポイントは、お客様の感動ポイントを「出発前」に置いているところです。
旅の最中に満足いただくのは、他のサービスでも当然力を入れてやっています。しかし「ななつ星」は車中はもちろん、その前にポイントを置いて、ストーリーを設計し、実践していることが、顧客の支持を集めていると言えるのだと思います。
「ななつ星」のコンセプトは”新たな人生にめぐり逢う、旅。”だそうです。
このコンセプトに基づいて、お客様にどんな”新たな人生”を体験していただくか、それは旅の前から始まっているということなんだと思います。
美容室に置き換えた場合も、この「感動ポイント」をどこに置くか、という考えは非常に参考になりそうです。
お客様が来店されて、お帰りになるまでの間(お店にいらっしゃる間)は、当然ながらどのお店でも力を入れているはずです。
となると、別のところでも感動ポイントを作るというのは、新しい美容室サービスの形になるのかもしれません。
初めて来店される方が予約をされてから実際にお店に来られるまでの間、一度来た方が次回来店するまでの間 にどんな感動体験を(スタッフとお客様が一緒に)していただくか。
各サロン(企業)が目指すビジョンをもとに、そんなことを改めて志向し、設計してみるのも良いのではないでしょうか。
記事筆者:藤波裕樹